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Tuesday, December 07, 2010

カメムシはなぜ群れる?

生態学ライブラリー12
カメムシはなぜ群れる?
離合集散の生態学

藤崎 憲治

四六上製・258頁・税込 2,205円
ISBN: 9784876983124
発行年月: 2001/02
内容
その臭気ゆえに何かと嫌われるカメムシたち.かれらは食物や異性をめぐってあるときは集まりあるときは散らばる.「集まること」の損と得を考えながらカメムシたちのユニークな暮らしぶりを描き出すことでかれらがただ臭いだけの虫ではなくさまざまな興味をかき立ててくれる面白い生き物であることを紹介する.
目次
はじめに
第一章 餌をめぐる集合と分散
1 密度効果と集合効果
2 ホオズキカメムシとその集合性
閑話1・ホオズキの語源
3 集合形成のメカニズム
4 集合効果の検証
5 集合効果のメカニズム
第二章 捕食者をめぐる集合と分散
1 臭気の直接的防御効果
2 警告色と集合効果
3 警報フェロモンとしての臭気
閑話2・食文化としてのカメムシ
4 利他的な集団か、利己的な集団か
第三章 異性をめぐる集合と分散
1 交尾なわばりの発見と検証
閑話3・鞍馬での想い出
2 なわばり防衛行動とあぶれ雄の戦術
3 闘争における非対称
4 なわばり防衛のコストとなわばりの崩壊
5 なわばりとハレム
6 雌の戦略
7 闘うカメムシたち
8 ハレムではない交尾集団
第四章 越冬場所をめぐる集合と分散
1 越冬場所への集合とその意義
閑話4・カメムシ類の異常発生の原因
2 スコットカメムシの交尾行動と交尾特性
3 栄養物の移送
4 越冬中になぜ交尾できるのか
5 越冬中交尾の適応的意義
6 昆虫類の婚姻贈呈
第五章 繁殖場所をめぐる集合と分散
1 カンシャコバネナガカメムシとの出会い
2 カンシャコバネナガカメムシとはどういう昆虫か
3 サトウキビとはどういう作物か
4 個体群密度と翅多型
閑話5・調査失敗談
5 ディングル博士の研究室へ
閑話6・デービスでの生活
6 翅型と繁殖戦略
7 翅型決定の季節的要因
閑話7・ハブ騒動記
8 休眠する卵
9 翅多型と卵休眠との関係
第六章 飛翔性喪失の進化
1 飛ばなくなったカメムシたち
2 翅多型性の進化的シナリオ
3 飛翔性喪失の生態的背景
4 移動分散の意義に関する理論
5 鳥類における飛翔性喪失
閑話8・西表島石畳事件
6 分散多型性研究の今後の展望
おわりに
謝  辞
読書案内
引用文献
索  引
プロフィール
藤崎憲治(ふじさき けんじ)

京都大学大学院農学研究科教授.農学博士.
1947年 福岡県生まれ. 1978年 京都大学大学院農学研究科博士課程単位取得退学.日本学術振興会特別研究員,沖縄県農業試験場研究員・主任研究員,岡山大学農学部助教授・教授を経て現職.
専 門:昆虫生態学.

主 著
 『動物の個体群と群集(生物学教育講座7巻)』(共著,東海大学出版会,1980年).『無名のものたちの世界』(分担執筆,思索社,1980年).『昆虫学セミナーⅢ 個体群動態と害虫防除』(分担執筆,冬樹社,1989年).『動物たちの生き残り戦略』(共著,NHKブックス,日本放送出版協会,1990年).『♂♀のはなしーー虫』(分担執筆,技報堂出版,1992年).『植物防疫講座第3版ーー害虫・有害動物編』(分担執筆,日本植物防疫協会,1997年).『応用昆虫学の基礎』(共著,朝倉書店,2000年).

群淘汰説と個体淘汰説

群選択説(ぐんせんたくせつ、Group selection)とは、生物の進化に関する概念および理論の一つ。集団選択説、グループ選択説、群淘汰説などとも言う。以下の少しずつ異なる三つの概念に対して用いられる。
1. 生物は種の保存、維持、利益、繁栄のために行動する。あるいは生物の器官や行動はそのためにもっとも都合良くできていると言う概念。
2. 自然選択は種や群れの間にもっとも強く働く。従って「利他的な」振る舞いをする個体が多い集団は存続しやすい。(1)の行動の進化に関する理論。
3. 自然選択は生物の異なる階層で働くというマルチレベル選択説の一部。
種の保存、種の維持のためといった表現は広く見られるが、その概念は曖昧であり、理論的・実証的な根拠なしで用いられてきた。1と2をあわせて古典的な群選択、またはナイーブな(稚拙な、単純すぎる)群選択と呼ばれる。古典的な群選択は非常に限られた状況でしか起こらないことが分かっており、生物の行動を種の保存のためと説明するのは誤りである。種が存続しているのは個体が種のために尽くすからではなく、その種を構成する個体が存続している結果である。このような「種のため」という考えは自然選択の理解を滞らせたという意味で「群選択の誤り」と呼ばれる[1]。現在でも支持されることがある(3)の群選択説は古典的な群選択とは異なる概念である。

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