「雑木林の生態系と管理」 講演会参加

主催 国分寺市/緑と水と公園課
団体 西恋ヶ窪緑地(通称エックス山)等市民協議会講演会(第2回)
主題 雑木林の生態系と管理」
エックス山(西恋ヶ窪緑地)は、市民が身近に自然と接することのできる
かけがえのない雑木林です。エックス山等市民協議会と市は協働で、市民
に多様な自然環境を提供できるよう取り組んでいます。
エックス山等市民協議会は、植物類専門の畦上能力(あぜがみ ちから)
先生を講師に迎え、市内の雑木林をどのように管理していけばよいか「雑
木林の生態系と管理」についてお話を伺います。皆さんお誘い合わせの上、
ご参加ください。
【日時】3月9日(日)午後1時30分~3時30分
【会場】ひかりプラザ(光町1-46-8) 国立駅前
【講師】畦上能力さん
(八王子自然友の会会長、日本植物友の会理事、元東京都自然環境
保全審議会委員)
感想 準備された会場(50名程)は一杯でした。半数以上が主催国分寺市以外
からの参加者だとの紹介がありました。畔上氏への質問にも殆どが他
市からの方々でした。どこの緑地でも同じような悩みを抱えていると
思いました。「どのような管理が望ましいのか?」。講演会で頂いた
「西恋ヶ窪緑地整備方針」の小冊子と畔上氏の講演内容はまさしく
「雑木林の生態系と管理」の教科書のようなものと感じました。
その模範解答のような原稿の一部を下記に載せて置きます。
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1.36haの広さの樹林地は国分寺市にとっては大きな樹林地であるが、
生物のハビタット(生息空間)としては必ずしも十分な広さではない。
それ故、細心の注意をもって保全管理に当たらなければならない。例え
ば、手を加えて林冠の一部を開け、意図的に林冠ギャップ(問隙)をつ
くる。そうすることによって、土壌シードバンクの埋土種子を目覚めさ
せることができる。或いは、手を加えず一部薮を残す、マント群落を残
すなどして、多種多様な自然空間を生み出せば、多くの生物がニッチ
(生態的地位)を確保することができる。このように同じエックス山で
も適切なゾーニング(地種区分)によるきめ細かな管理をすれば、多種
多様な生物を呼び戻すことができるようになる。このことはエックス山
が市民の貴重な緑の財産であることを証明するものでもある。
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講演の内容が的を得ていただけに、個人的にはさらに発展して、この
ように島嶼化した緑の島をつなぐ「緑の回廊」構想が実現化する夢のよ
うな話も期待しました。
閉ざされた緑地の面積と生物の多様性には減少傾向があると以前何か
の本で聞きかじった覚えがあります。常識的に考えても狭い場所には生
き物が限定される事はわかる。島嶼化した広くない緑地は数十年、数百
年単位では温存される種よりも絶滅する種のほうが多いことも想像され
る。コウノトリのTV番組で「コウノトリを野生復帰させる中で意識し
たのが遺伝的な多様性。注目したのが、細胞のミトコンドリアにあるミ
トコンドリアDNAの塩基配列。 これは母方から代々受け継がれるた
め、その塩基配列の違いを調べれば、遺伝的な近縁関係を知る一つの目
安となる。ミトコンドリアDNAに注目して遺伝的多様性を調べること
で、 絶滅に瀕している生物の保護に生かそうという取り組みはコウノ
トリ以外でも始まりつつある。」という研究が報告されています。飛べ
ない虫達ならばなおさら絶滅の頻度は高まると想像されます。
都の緑化計画は「ヒートアイランド」に代表される都市の弊害を減ら
す策に他ならない。都のHPには以下のようにうたわれている。「緑化
は失われた自然の回復のはじまりです。都市の中に美しい景観を形成し、
うるおいとやすらぎのある快適なまちづくりに重要な役割を果たしてい
ます。また、ヒートアイランド現象の緩和、大気の浄化、雨水の浸透な
ど、都市生活の面において多様な役割を担っています。このため、今あ
る緑を守り育て、失われた緑を少しでも多く回復していくことが必要で
す。
東京都では、道路に接する部分に緑を確保する「接道緑化」をはじめ、
地上部の緑化に加えて、建築物の屋上や壁面、ベランダ等を緑化する
「屋上等緑化」を推進しています。」とあります。
周辺都市はもう一歩先を行く施策が望まれます。平野に注ぐ河川領域
はそれを軸として上流(山間部)と下流(都市部)との生き物の往来を
助け、生命多様性を育む命綱と捕らえる考えかただ。横断的には、虫の
道(私の造語で、ミミズやタヌキ、蟻などがアスファルト道路を横断で
きる専用トンネル道路)や鉄道路線領域の緑化といった斬新な考えも必
要とされる。
集った我々の思いは昭和30年代(自分が10代の頃)の産業構造の
大転換(炭→油、堆肥→化学肥料等)を境に失われつつある環境への共
通した認識だと思います。便利になった分、地球規模の環境破壊と食へ
の不安。それに文化の消失が危惧されます。
すだく虫の音がアオマツムシしか聞かれない都心。どこへ行っても車
の騒音でかき消される自然の音。アスファルトとコンビニのある通りだ
けを毎日通学する子供達の心に自然はどう映るのでしょうか。毎日メダ
カや稲穂や、トンボやツバメに囲まれながら通った私の頃の心のもちよ
うとは違った意識があり、日本の伝統的文化が理解しづらくなる事は間
違いないと思います。
過度な石油エネルギーへの依存と石油製品を種としたゴミ。人はもと
には戻れないと言います。もっとエネルギーをと原子力を推進する人も
います。車もゆずれず、エコカーの導入で炭酸ガス排出の低減を期待し、
2020年までに低CO2排出ライフスタイルにするには個人で50万
円の出費が必要と政府は発表しています。
一大危機にある事態の打開には、身近な石油の高騰、農薬汚染による
食への不信感、温暖化による猛暑、農作物や漁業の変化など、大災害が起
こって初めて何かが変わるのではと諦めにも近い期待をします。前例の
無い社会生活を根本から変える産業革命的発想が必要な気がします。
会場の司会者は以前、都主催の「緑のボランティア」講習で机を並べ
た方で、活躍されている様子に頼もしく思いました。もう1人卒業生と
もお会いしました。このような場には必ず仲間が居ると言う感じです。
畔上氏は八王子在住で八王子自然友の会会長である事をはじめて知り
ました。自然友の会は八王子市広報コラムの自然紹介記事に記載されて
おり、常々どのような会なのかとは思っていました。20年程前に買った
山と渓谷社出版の日本の野草の解説執筆者が畔上氏である事も今回知り、
この膨大な図鑑の解説からもわかるように、その植物の造詣の深さに圧
倒されました。小宮公園や片倉城址公園などその設立・構想に携われたと
言うお話も講演で知りました。
講演会に先立ち、エックス山がどんな所か立ち寄ってきました。約4
千坪ほどの緑地らしいのですが、山ではなく平坦な雑木林といった感じ
です。春浅く活動する虫達にはあえませんでしたが、動か無くなったア
オオサムシ?が林の道の中央で見つかりました。越冬した個体でしょう
か、誰かに踏まれてしまったのかな?
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