参加日 2006/4/9(日) 13:30~16:00
場所 東京国際フォーラム ホールA
要綱 託児所 有り
主催
言語交流研究所ヒッポファミリークラブ後援 外務省、文部科学省、(独)国際交流基金
(独)国際協力機構(JICA)
(財)海外技術者研修協会(ATOS)、朝日新聞社
協賛 (株)日立総合経営研修所、(株)JTB
プログラム 1.開催の挨拶
尾関雅則 (言語交流研究所理事/元鉄道総合技術研究所理事長) 2.活動紹介
3.パネルディスカッション「ことばと人間」
コーディネーター 南繁行(大阪市立大学大学院工学研究科教授電子情報系専攻長)
パネリスト 赤瀬川 原平(画家・作家)
パネリスト 中村 桂子(生命誌 理学博士/JT生命誌研究館館長)
パネリスト 丸山 瑛一(工学博士/(独)理化学研究所 知的財産戦略センター長)
感想 ヒッポの名前も初耳で、どのような団体かも知らず、今年(2006)はじめ、自宅に投函されたチラシ案内の講演会に初参加しました。自宅から自転車で10分程の地元八王子東淺川保険福祉センターで2/21に行なわれたものです。この時は子供を持った母親が十数人で男性は私1人でした。その事からも凡そ、その時の内容が想像していただけると思います。今回(2006/4/9)は大々的なプロパガンダでホールほぼ満席の5000人(内ファミリー外が3000人)と大盛況でした。
「7ヶ国語を話す」「フーリエの冒険」「量子力学の冒険」など、学校教育で落ちこぼれた私にとって、口に出すにも吐き気がするフレーズです。いったい何を目的として、どのように取り組んだのか誰もが知りたい世界です。
創始者 榊原 陽 代表理事からの話がありました。ご高齢で日本語で話しておられるとは思うのですが、殆ど聞き取れず、このヒッポクラブの方針のように、話しはさておき、まさしく歌(お経のよう?)を聞くようでした。時々会場から笑い声も有り、ファミリーには通じているようでした。
世界的言語学者ローマン・ヤコブソンの知遇を得て代表理事は....と案内パンフレットに記載されています。そこには彼がやって来た事はただ一つ「人間とは何か」という事を探求してきたとありました。
言うまでも無く、人間と他の生物の決定的な違いに言語能力があります。それも意図した教育ではなく、赤ちゃんが母親との言葉の場で体得するものです。そこに目をつけ、言葉への障壁を乗り越えようと代表はこのヒッポファミリーなるものを展開されたようです。
ですから可能性が高いのは赤ちゃんです。だから託児所の併設です。一方大人にかされた問題は、大人がいかに赤ちゃんになるかだと思いました。
一方で、何故このような活動が25年も続き世界に広まったかの疑問の一つに組織のありようがあります。いわゆる英会話教室のように教える人、教わる人という垣根を取り払い、ファミリーという人くくりで、多数で語る(歌う)という方法にも謎解きのヒントがあるように感じました。
難解なシュレンディンガーの波動方程式やマクスウエルの方程式といった理論とこの言語活動との接点は、数式も言葉の一つだと言う榊原代表の説明は半分頷ける。当日のパネリストの方が、論語読みの論語知らずの例を引き、子供のころ意味もわからず覚えさせられた事柄も時間が経てば理解できるようになる事かもしれないにも半分頷けた次第です。
ポーランドのザメンホフが発表したエスペラントは人工的な言語で今は衰退している。 その理由の一つに、
言葉は生きていて受け止める人が周りにいる事が必要だという環境に欠けたとの説明がパネリストの方から話がありました。
確かに自分の体験からもそのように思うし、この会が賛同者の会員を多く集め海外留学や、ホームステイの受け入れなどにも熱心なことからも言葉を受け止める場が必要と感じた活動である事が頷けます。
中村桂子さんからはウェルナー・ハイゼルベルグの「部分と全体」との関連で話された赤ちゃんの話が印象に残りました。手だけが生まれてくるわけでは無いし、足だけが生まれてくるものでも無い。正しく全体が見えてくるわけで
言葉も生まれてくる原点に立てば理解しやすい。これには説明が必要ですが会場での各発表者からの例に、赤ちゃんがワンワンを覚えたとして、次に猫もライオンも全て四足の動物を見れば「ワンワン」と声をだす。でも母親が猫には「ニャンニャン」とか別の言葉を言う事によって、次第に猫は「ニャンニャン」と理解するようになる。
また別の代表者の説明に、十数カ国後を話さざるを得ないアフリカの人が初めて日本に来て、その言語体得能力に驚嘆した話をされました。
その彼が日本人同士のわからない話を聞き続けて、会話の始めに「エーッと」という音を覚えたそうです。また別に「でしょ?」という言葉も覚えた時点で、日本に来て数週間のうちに彼は「エーッと....途中は全部英語....でしょ?」と話し始めたそうです。それを聞いていると全体には日本語を話しているような気になって来たというお話でした。これで「部分と全体」の話が少し結びつくような気がしますが、いかがですか? 瞬く間に日本語が上達する彼に、何故そんなに上手くなるの?と聞いたところ彼は「ダッテヨクキケバワカルジャン!」と答えたそうです。ちょっと出来すぎた話だとは思いますが。
この25年間の間に、ファミリーの子供達が成長し、活躍し始めたようです。各弁論大会で優勝者が出たり、国外との交流も増え、国のほうも支援し始めた感がします。英会話教室では「エーッと」は教えないでしょうから!